万年筆と神経毒

浸潤する言葉を。

同人ゲームのパッケージ作り(Jeux bleuの場合)

 Jeux bleu(以下JB)のパッケージを気に入ったと言って下さる方がちらほらおりとても嬉しく思う。過去作Child of Doppelgänger-Prequel-の時もそうだったが、僕は凝り性なものでパッケージにも拘りを持って作品の一部として制作している、人によっては無駄だと言うかもしれないがこれは僕の小さな矜持で軽んじられない部分なのでどうしたって手を抜けられない。というわけで折角拘ったのならどのようにパッケージを作ったかを備忘録的に残そうと考え筆を執った次第である。

 

 パッケージの制作過程を一つずつ振り返ってみる。

1. デザイン

 デザインがなければ何も始まらない。しかし僕は絵が描けぬしデザインにも明るい訳ではない(辛うじてGeigy社の1940-1970年における広告デザインの本を持っているくらい)。だから僕のデザインの方向性は絵に頼らない(頼れない)ものになってしまう。

 JBのパッケージを考えるに当たって作品タイトルが示すように青を基調にしようと考えた。加えてメインキャラクタ—であるスィニヤの身体が透き通っている設定であることも踏まえ素材には透明感のあるものを用いることにした。

透き通っている素材と言えばプラスチックやアクリルがあるだろう、またトレーシングペーパーといった紙素材の中にも透け感のあるものがある。こうした素材を候補に挙げつつディスクの入れ物にはエレコムCCD-JSCS50CBUを用いることにした。これは比較的珍しい背面が水色をしたスリムケースで手ごろな値段だった(購入当時は¥50/枚)。そして入れ物の素材を実際に注文し、寸法を測りつつ次のようなデザインを考えた。

 中に入れるカード(表紙)には水面を模したデザインをし、JBのデザインとして統一している白枠をあしらった。またこの時には既にトレーシングペーパーを用いようと考えてもいた。PP素材のカードも候補の一つだったが紙の素材の方が扱いたかった。

 灰色部分には銀色のシールを用いることとし、またタイトル部分には銀色のシールの上に更に透明素材のシールを貼り付けようとも考えた。こうすることでスィニヤの設定を反映しようと思ったのだ。実物の話になるのだけれど、タイトル部分には銀色シールと半透明シールとで[Jeux bleu]の文字にずれをあえて作っている。こうすることで身体と内側の骨という要素を反映させた)

 

 ディスク盤面は眼球を意識してデザインしてみた。印刷についてはUV印刷を用いる事をあらかじめ決めていた(半透明のインクによる印刷のため)

 

2. 発注

 おおよそのデザインを考えたら各印刷会社のテンプレートにしたがって素材を発注した。僕はよくハグルマストアを利用しているのだけれど(名刺もここ)、勝手がある程度分かっているのでJBでもここのお世話になった。

 銀シールは¥60/枚、トレーシングペーパーは¥110/枚、タイトルの透明素材のシールは¥40/枚で作成することができた。※今回パッケージは100部制作のためこの値段だが、生産数を増やせば単価は下がる

 ディスクについてはK社、T社、A社と相談してみたが、現状機械を稼働できるのはA社のみだったため今回はA社に頼んだ(¥350/枚)。※Child of Doppelgänger-Prequel-の際にはK社を利用した。

 

3. 工作

 印刷物に対する作業カット作業は自分で行った(これは発注先が紙素材のカット作業を承っていないため、シールはカットされている)。以下の写真にある一枚のトレーシングペーパーから自らの手で切り出していった。コミケで頒布した栞はこの時の副産物。

 切り出した紙は裏表で糊付けした。幸いにも白い枠にそって糊を塗布したので接着の痕は目立たなかった(糊付けを加味してデザインはしていた)。

 またケースにも一手間加えている。量産型の工業製品であるためかバリがあったためカッターで削っている(特にタイトルのシールを貼る箇所に型の影響かバリが必ずあった)。バリをとり終えたケースにはシールを貼付けていった。

 最終的に次のようなパッケージとなった。諸々の素材を組み合わせてやっと完成した現物はデザイン通りになってほっとした(色味の違いはあるけれども)。

 

完成。

 

 改めて書き出してみると個人でないとまずできない作り方をしている(僕の手先の器用さに依存しているため)。馬鹿だなあ、でも自分の好みを形にすることが楽しいのは確かだった。

 

 もしこんな変なパッケージを作りたい方がいればデザイン等の依頼をしてもらっても構いません。