万年筆と神経毒

浸潤する言葉を。

三月と言葉

20240302, Sat

 最近まともに文章を読めていない、読書の能力が格段に落ちた気がする。長時間文章を追っていられない、多分集中できれば問題ないのだけれどその集中が続かない。そもそも何かを楽しむことが出来ていない。まるで内側ががらんどうになってしまい水を飲んだそばから流れ落ちてしまうかのよう、肋骨の裏ぽっかり空いた暗闇の中を素通りしてしまう。渇いている、潤わない。まずいなあ、若干鬱っぽいのだろうなあとは思っている、思っているだけ。改善はしない。このまま何も読めなくなってしまったらどうしようか、焦っていては更に駄目な方向へ進んでしまうのだろうし、かといって静観できるものでもない。どうしよう、どうしてくれようか、でも今はまだ大丈夫だと言い聞かせる、何も大丈夫ではないと思っているけれど大丈夫だと根拠ない空の言葉を投げ掛けて、中空に反響する無意味な言葉に首肯するのです。まだ大丈夫だから。僕はまだ大丈夫だから。何が? 何でも。何も楽しめなくなる前に何かしなくてほんとうに大丈夫か? 大丈夫なはず。今はただ少しでも感覚の鈍らぬよう短な詩でも眺めていよう。ツェラン、ウンガレッティ、パステルナーク、マンデリシュターム。透明なペトロポリスで僕らは死ぬだろう、

 

20240303, Sun

 バックアップ用のHDDが壊れたようだ。急にバックアップがとれなくなり、見ればバックアップディスクが見つからないとエラーを吐いている。通電して、ディスクが回っている音がしているのに、接続されていないことになっている。悲しいなあ、どうして急に壊れてしまうのか。まあ電子機器なんて急に壊れるものではあるのですが。買い替えるにしてもSSDにするかなあ、HDDは煩いし。owcが確か新型のSSDを発表していたっけ。

 

20240305, Tue

 Geigy社のデザイン集(Corporate Diversity: Schweizer Grafik und Werbung fuer Geigy 1940 -1970)を注文した。ドイツ語なんて読めないけれど、英語版は随分と高くなってしまったので仕方なくこちら。まあでも文字よりも写真(絵)が主体のものだから別にどちらでもいいっちゃいいのです。楽しみだけどしかし海外発送なのでいつ届くやら。

 

20240310, Sun

 次回作Jeuxbleuの登場人物の一人、スィニヤ(синяя)はスライムの様な身体を持つ存在として書いているのだけれど、僕にはめずらしくしっかりと名前を考えて付けた。普段は意味をあまり持たせないようにしているが彼女は特別だったから。スィニヤ(синяя)[※正しいロシア語的発音はシーニャ]が示すように青という意味ではある、そのままだけどこれが発音としても一番しっくり来たし作中での衝動的な名付けにもぴったりだと思った。他にも候補はあった、メデューザ(Медуза)はその一つで意味はクラゲ、ギリシア神話メデューサ有機化学分野におけるエマルジョン(水と有機溶媒の中間相)等に相当する。彼女の設定を鑑みればこの語がもっとも捉えていると僕は感じている(キャラデザの髪に相当する部分をうねった蛇のようにしているのはこの名残り)、半透明でクラゲ様の身体を持ち、人と人外との中間のような存在で、本当にぴったりではないか。でも発音があまり馴染まなかったし、作中の場面でそんな名付けをするようにも思えなかったから採用しなかった。いやぁ、実に適した言葉だったのだけどなあ。

 

20240312, Tue

 僕はビルケンの革靴を愛用している——足が幅広なのでビルケンの特徴的な幅広の靴が佳く馴染むのです。先の年末に靴底が随分磨り減って傷も多くなってきたので買い替えようと店に行ってみればその靴は廃盤になりましたよと言われ、革靴(シューズ)自体が店内に並んでいなかった。すっかり悲しくなって、今日まで靴をどうしようかと悩んでいた。修理するにしても中もボロボロになっているので新品よりもずっと費用が掛かるし、いっそオーダーメイドも考えたけれど履きつぶすような靴に過剰なコストもかける気にはなれなかった。しかし今日サイトを見てみれば使っている色のものは無いにしても同様の型のものが復活している。いやあ、嬉しいね。これで次の靴に困ることはなさそうです。しかしまた廃盤になるといやなので二足ほど買っておこうかしら。同じものを形のものを使い続けるのは奇妙ですか? でも服も靴も同じものが幾つかあると安心するものです。そうでしょう?

 

20240313, Wed

 アレントの人間の条件の新訳を買ったのに読めてないなあ。どこかでまとまった時間をとって軽くでも目を通したいです。

 

20240317, Sun

 パッケージのデザインを考えるのが楽しい。封蝋を使ったものとかやってみたいなあと思うけれどそれは流石に邪魔だよなあ、願望に留めておきます。既にCDケースは作っているのでそれを収める箱を用意したい。多少コストは掛かってもやりたいことを詰め込みたいなあ。

 

20240320, Wed

 先のコミケで作った栞を実際に使っているのだけれど大きさも丁度良いし、光の加減によって見え方が変わるので楽しい。百枚以上手元にあるので挟んだままにしても減った気にならないのがいいですね、昔から栞を挟みっぱなしにしてどこへやったのかを忘れてしまう人でした。

 今日はハムレットを読んでいた、僕はシェイクスピアの中でもこれが一等好きですね、有名な頭蓋骨を手に取るシーンが特に。何とかわいそうなヨーリック! 俺はよく知っているんだ。

 

20240324, Sun

 難しい言葉を否定するツイートを見て、少しだけ悲しくなった。そんなものなのでしょうか。僕は言葉を石のように感じている——それらは冷たさや質量を持っていてそれぞれが異なる色味、輝きを持っている。だからこそ周辺の環境によって似合う言葉があって、難しいから/理解できないからといって排斥すれば違和感のあるぼやけた表現ばかりになってしまうだろう。たしかにヤバいとかグッとくるとかそれらの言葉は使いやすいしある程度状況(感情)を表すと思うけれど包括的で曖昧な表現であるからね、示したいものの微細な部分を見えなくしてしまう。

 

20240327, Wed

 好きだったものをまた一つ好きではなくなってしまった。なのに好きなものは増えない。日に日に渇いていく。

 

20240331, Sun

 年度の最後の日。特にない、別に普通の一日。明日も新年度だからといって僕には大きな変化があることもなく、きっと平坦に続いていくことでしょう。