万年筆と神経毒

浸潤する言葉を。

文月の言葉

20230701, Sat

 もう今年が半分過ぎてしまったのだと思うと恐ろしいね、まったく時間というものは勝手に経っていくし、捉えられないものであるから困ったものです。半年を振り返ってみても朧げでまるで僕は今まで何をしてきたのだろうと思うばかり。でも今日はやっと新作のディスクレーベルの印刷とパッケージの発注を済ませましたので少しは進んでいるのだと思います。あとは本編を完成させればいいのだけれどまだ作業は山積みで峻険な岩肌を昇っているような心地、少しでも手を滑らせてしまえば落下してしまうような、終わってしまうような気がしてならないのです。神経はぴりぴりと張りつめていて、先月は結局ほとんどブログを更新できなくてもっと時間があればいいのにと思うけれど、反面あったところで僕は関係の無いことに浪費してしまうことは明らかで気が滅入る。

 水無月は終わり、だけどまだ空は水を蓄えているようで今日もじっとりとした雲が重く垂れて、空気に水分が飽和していてまったく蒸してしまうね。湿気が多いと本の状態にだって悪いし、黴びてしまいそうだよ、あらゆるものが菌糸に覆われて息絶えてしまうよ。

 

20230704, Tue

 自分の人生に諦観しているから、向上心がないから、どうでもいいと思っているから、成功したいと思えないし、だから自己啓発本をありがたがるような人のことを理解できないし、むしろ嫌悪すら覚えてしまう。馬鹿みたいだとも思ってしまう。こういう感情は好ましくないと、差別に繋がると思ってはいるのだけれどどうして消え去ることはなく深く深く刻まれていて、きっとそれは自分の肉親がことごとくそういう形質をもっているからなのだろうと思う。父も、母も、弟も成功したいと、今を変えて惨めな現実から抜け出そうとしていて、なんでそんなにも自分のことに必死になれるのか分からない。気持ち悪いと思ってしまう。資本主義の狂信者だとも思ってしまう。僕においては何にしても「どうせ」という言葉が接頭語のようについて回ってしまい真剣になれた覚えがないものですからある意味では羨ましくはあるのです。そのように自分の人生に自分を埋没させられるのであればきっと今の憂鬱も消えてしまうでしょうから。でも、出来ないのです。自分が遠いのです。

 

20230708, Sat

 新作用のパッケージを作った、中身はまだ完成していないけれど。想像していたものが実物として現れると感慨深いね、なかなか良い感じに出来たと思う。だけど少し拘り過ぎてしまってパッケージの側だけで五百円くらいするのだよね。まあ自分が満足しているから値段なんてどうでも良いことなのですが。

 

20230713, Thu

 コミケまであと一カ月。まだまだやること多くて大変。

 

20230717, Mon

 新作の制作は大詰めで、あとはスチルを用意してデバッグをするのみになりました。スチルはまだ一枚も描けていないのだけれど、六枚ほど描こうかと考えていて、目算では二週間で用意できると思っているのだけれど果たして僕は頑張れるのでしょうか、絵は得意ではないので苦しみつつ進めたいと思います。

 ゲーム製作が終盤になって改めて思ったのは、やはり創作って辛いことばかりでなんでこんなことしているのだろうということ。鬱屈の発散の為にやっていることなのに、苦しくて仕方がなくて、でも止めてしまうと息が詰まるような気持ちになる。何度も筆を折ろうと思ったし、実際に大学院にいた二年間は制作していなかった。あのまま止めて溶暗してもよかったはずなのに、僕はどうして続けていて愚かしいね。苦しくても、苦しいからこそそちらへ向かってしまう、自分を損なうことで気持ち良くなってしまう、こんな僕はだからやっているのでしょう。創作において僕にはほとんど楽しさというものはなくて、この状況は僕が長距離を走っていた時と重なるように思う。最初から最後まで苦痛は続いて、なんでこんなことをしているのだろうと思い続け、最後のラインを走り抜け解放される一瞬、その時にやっと得られる微量で致死的な快楽のためにするあの行為。苦しみの中で踠きながら文字を綴る執筆という行為。どちらも祈りの中にいるような心地になるのです。目の前が赤く、青く、明るく、暗く、白く、黒い。払暁の海岸線に跪いて黝い海と明るい空に自分を投じるような、あの行為。

 

20230720, Thu

 生きているだけで疲れてしまう。あらゆることが憂鬱で、まるで今の僕は人生の余韻の中にいるみたいだ。感覚の色が苦しい、透明になりたい。純粋になりたい、純粋な存在に。

 

20230723, Sun

 絵を描いている。難しい、相変わらず線画なんて描けもしないのでべたべたと色の塗り重ねてなんとかそれらしく見えるようにしている。今日はやっと二枚目のスチルを描けたので八月一週目には予定していた数のスチルを用意できそう。描いていて思うのは、数年前よりも多少は上手に描けるようになっていること、一年に二枚くらいしかまともに描かなかったのに、継続も出来ていないことなのに、どうして上手になっている。もっと真剣に絵を描くようになっていたら更に佳い絵を描けるようになっていたのだろう。でも、僕は絵にかける情熱がほとんどありませんので妄想に過ぎません。

 

20230726, Wed

 もう七月も終わりに近付いていて、時間が経つのは本当に早いと思う。これは僕が絞め切りに追われているからそう思うのもあるのだけれど、単に起伏のない月でもあったからなのだと思う。家にいてすることといえばパソコンと向き合ってキーボードを叩くか、ペンを持って腕を動かすことで、全くインプットというものをしていない。こんな生活が長く続くと能力が枯渇してしまう。美しいものに触れて、咀嚼して、栄養としなければ死んでしまうのです。だから、と言う訳でもないのですが今日はウェルベックの滅ぼすを買ってきました。コミケ後にゆっくりと読みたいと思いつつ、最近はまるで長い文章を読んでいなかった(自分のを除く)ので読書筋が衰えているだろうなあと。いまソローキンのロマンを読もうとしてもきっと挫折してしまうだろうね——そもそも僕はソローキンの青い脂は挫折したまま開いてすらいない。加えてカラ兄の再読もしたいですね、あれはいつ読んでも発見があるし、いわば僕の聖書も同然なんです。まあドストエフスキー作品の中では三番目くらいに好きという中途半端な位置にあるのですがね、聖書と表現はするけれど、決して一番ではないのです、一番ならルーツといった表現をするでしょうから。作業が終わったら暫くの間インプットにいそしみたいです、美しさの中で窒息したいです。

 

20230730, Sun

 今月はあまり日記を書けませんでしたね。今はスチル作業に掛かりきりでそれどころではないんです、でも何かしら書いていかないと鈍ってしまうと思いつつ、やっぱり割ける余力がないのです。