万年筆と神経毒

浸潤する言葉を。

葉月の言葉

20230803, Thu

 七月はただただ酷暑ばかりを置いて去り、陽光に濡れたあらゆる人工物は灼熱を放っていて、エアコンの涼風がなければ死んでしまいそうな八月。水道水のぬるさが、空気の湿り気が、生い茂った緑からの草いきれが、叢樹から響く蟲の音が、アスファルトの歪んだ黒さが、汗の滴りが、熱く吐き出される吐息が鬱陶しい。生命が大きく栄えるのを見、生きることを放棄したくなる季節。

 コミケまで一週間と少し。新作はほぼほぼ完成していてスチルも予定の枚数を描き終えているのだけれど、若干余裕があるので間に合えば二枚ほど増やせそう。次の土日で仕上げて、あとはROMに焼くことにします。マスターアップを宣言していないけれど、完成していると思ってくれて構いません。

 

20230808, Tue

 ゲーム制作が落ち着くのでそろそろ日記の更新頻度を増そうと思う。

 

20230809, Thu

 コミケの準備もほぼほぼ終え、残すはディスクに焼くことと検品と相成りました。ここまでくるのに随分と時間を掛けてしまったし、完成した後になって——執筆中であっても——もっと佳い文章を書けたのではないかと悔やむべきことが多くて情けない。少なからず妥協したこともあって、次回作はもっと丁寧に作りたいと思う。制作を終えて、やらなければと思うのは次回作の制作で、まるでワーカーホリックだね。表現することに囚われてしまっているのはどうして僕は不器用だからなのだろう、手先は器用でも生き方が下手糞だ。

 次はドッペルゲンガーの子供本編となると思いますが、もう一つファンタジー系もお話を書いてみたいと思っていたりしています。スライム型人間、複製、遺伝子、同一性をテーマにしたお話を。まあこれは全く構想未満のことです、下らない一過性の独り言とです。とかくコミケまでに仕上げられる部分は仕上げていきます。当日は何卒よろしくお願い致します。

 

20230810, Fri

 DVD焼き終えた。50部も用意したのだけれど一枚一枚焼くのもあってか大変だった。一応ランダムでピックアップして中身が壊れていないか確かめたので大丈夫なはず、はずです。明日は当日に持っていくお品書きを印刷しましょう、そうしましょう。

 

20230812, Sat

 明日はコミケの二日目、僕は西い12aにてChild of Doppelgänger-Prequel-というノベルゲームを頒布します。五時間くらいで読み終えられる、そんなに長くない作品です。絵が得意でないけれど数枚描きました、相も変わらず線画が描けないのでべたべたの厚塗りなのだけど。作品の内容は過去作と比較しても物語性に富んでいるかと思います。興味のある方は手に取ってもらえると嬉しい。

 

20230813, Sun

 C102ありがとうございました。今日はもう眠いので寝ます。

 

20230819, Sat

 コミケから一週間が経とうとしている。僕の作品をプレイして下さった方が既に数人いて驚いている、自分でも衒学的で憂鬱な人を選ぶ作品になってしまったと思っているのだけれど、それでも評価してくれる人がいるのは単純に嬉しい。Prequelはその題が示すようにGnosis(霊的な知)であるから意識して自分でも嫌になるほど衒学的にした、やり過ぎたかなと思う。まあ本編はクライムサスペンスノベルになるので全く毛色の違う話になります。

 あとC103の申し込みをした、全年齢の短編を作るつもりです。まだシナリオは書き始めたばかりなのだけれど、結局他人に読んでもらうまで優れているかは分からないから感触がどうとかいう話は出来ない。まあ明るい話になるんじゃないですかね。架空の寒村を舞台にした人型スライムと少女の恋愛です。三人称で書いているのもあって過去作とはかなり違う文章になると思う。今作は少なくとも音楽は外注します、絵はどうしよう、頼もうかしら。

 ここ一週間は新作の準備だとかで地味に動いていて全く休まらないね、ドッペルゲンガーの本編の方もちょっとづつプロットを進めていてやることが多過ぎる。自分を浪費しているよ。苦しいばかりだけど、その苦しさがいいのだね、結局僕はサディストでもあってマゾヒストでもあるからね。

 

20230821, Mon

 怪しいセミナーでよく分からない資格を取得しついに仕事をやめた母親はなぜがお金がないと嘆き、それなのに見返りのない保険に登録している。どうやら最近僕の名前を勝手に借りて登録もしていたようで困ったものです。あの人を説得することなんてできないから僕はもう彼女の崩壊を眺めるしかないのだけれど、そろそろ実害が出てしまいそうなので更に距離を置くべきなのかなあ。今年の夏は実家に帰ることも拒否した、関係が険悪という訳ではないのだけれど会って話すこともないし、彼女の言葉に耳を傾けるつもりもなかった。いい加減目を覚まして欲しいと思うのは僕の勝手な願望で、夢から覚めて現れる荒漠たる現実はきっと精神を摩耗させてしまうと分かっている。彼女だって分かっているからいつまでも甘い宿願を胸にして、脳を麻痺させながら愚かな選択をし続けるのでしょう。

 

20230823, Thu

 僕は根っからのぐーたら人間ですから、何らかの〆切がなければまともに動くことが出来ないのです。創作者にありがちな胸の内に灯る情熱だとか、切々たる願望など持ち合わせてはおりませぬ。新作だってコミケという期限を設定していなければ今年の末に完成していたかどうかもあやしいところで、しかし完成させることが出来てしまったのだから全く僕はどうして動くことは出来るのです。行動できるが、とてもスロースタータ—なもので、いざ動こうと思うまでが実に長い。こんな自分が嫌なのだけれどそれを改善することも煩わしく、嫌だ嫌だと嘆いてばかりの様はナマケモノにすら劣るだろうね。本編の方も少しづつ動いて明確な期限を設定しなければと思う、でないとずるずると作業を長引かせて完成はいつになることやら。想定としては二年後を目処に世に出したい所ではあるのだけど、はてさて未来の僕は頑張ってくれるのでしょうか。少なくとも今の僕にはある程度の気力がございます。

 

20230828, Mon

 文章が佳いと称されるのはとても嬉しいことです、だけどもその実僕は自分の綴る言葉の何が佳くて、個性的なのかが分かっていないです。ただ自分の中にある波のようなもの、リズム、美しさや憂鬱を表出させているに過ぎなくてこれが個性なのでしょうか。僕にはあまり想像力というものがありませんから、物語を創るにも色や映像はなく、無味乾燥とした文章と音律でしか出てきませんから、不思議でならないのです。舌先で転がした言葉の粒立ちや舌触りを感じることがもしかしたら他者が感じる所の映像的なイメージと連関しているのかもしれませんが。

 

20230829, Tue

 批評空間に新作がもう登録されていて驚いた、しかも既に何人もの方々にプレイして頂いている。なぜか前作の慈愛と祈りよりもプレイ済み多いし、不思議なものです。数で言えば慈愛の方が世に出回っている数が多いのですが、ドッペルゲンガーの方が書かせる何かがあったと言うことでしょうか、であれば嬉しいことです、少しは進歩できたということでしょうから。

 新作は前作の公開から四年ほど経ってしまったのだけれど、その間二年半ほどは院生でしたのでほとんど創作を行えていなかった。実作業は一年半ほどになるのでしょうか。次回作はドッペルゲンガーとは別の作品(習作的な)になるのだけれど、本編もできるだけ早く出せたらと思います——ボリュームはPrequelの二倍くらいかな——、予定では2,3年後を目処に……。しかしその頃の僕は29か、もう少し早く出せるといいなあ。